工学部長・研究科長挨拶

名古屋大学
工学部長・工学研究科長

宮﨑誠一

 科学技術の目覚ましい進歩、とりわけ情報通信技術(Information Communication Technology: ICT)の進展によって、 産業・経済・社会の構造が急速に変化する大変革時代が到来し、希望あふれる未来の創造に向けて、 これまで以上に科学技術イノベーションに挑戦する人材の育成が求められています。 技術史を振り返れば、1980年代から本格化した第3次産業革命(デジタル革命)は、上述のICTの進展やコンピュータの飛躍的な性能向上によって牽引され、 様々な産業分野で効率化が進められてきました。2000年代になると、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ解析、AI(Artificial Intelligence)、 ロボット等の新興分野での技術革新・高度化が産業応用への急速に浸透し、異分野技術融合による新展開(新たな社会・経済価値創造)が加速・促進されるようになり、 2010年代後半からは、第4次産業革命がより一層現実味を帯び、次世代社会(Society 5.0)と称される 「人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会」の実現への期待が高まっています。 2015年9月の国連総会で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の達成においても、 第4次産業革命やSociety 5.0を牽引する多様な産業分野での技術革新が不可欠となっています。 したがって、こうした時代の要請に応え、新たな社会価値の創造に挑戦し、未来社会を牽引する人材が強く望まれています。 そこでは、これまで以上に、既存の概念や価値観を超えた発想・着想への期待は大きく、ものづくりに直接携わる工学系人材の育成においては、 十分な基礎知識と高度な専門性に加えて、多角的な視野で物事を捉え、解決策を立案・遂行する能力が重要視されています。 端的に言えば、ポストコロナ時代の産業・社会変革をリードし、持続可能な社会を創るために、工学系人材への期待と責務は、ますます高まっています。

 名古屋大学は、世界を代表するものづくり産業の集積地に位置する研究中心の総合大学として、高度人材育成と先導的な研究を推進し、優れた成果を積み上げています。 2013年度に「研究大学強化促進事業」の支援対象機関に採択され、支援対象となった22機関のうち、トップ4に選ばれています。 また2014年度には文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」に申請した「21世紀、Sustainableな世界を構築するアジアのハブ大学」にも採択され、 研究力強化および徹底した国際化と大学改革にも取り組んでいます。こうした中、工学部・工学研究科は我が国及び世界の技術・工学の発展および産業界・学術界で活躍する人材育成に貢献してきました。 そして、2014年には、赤﨑勇特別教授と天野浩教授が、高効率な青色発光ダイオード(LED)の開発で、省エネルギーへの貢献が高く評価され、ノーベル物理学賞を受賞されました。 また、文部科学省が2018年度から導入した博士人材育成事業「卓越大学院プログラム」にも、4つのプログラムが採択され、そのすべてに工学研究科が関わっており、 エレクトロニクス、化学・生命科学の融合分野、情報・生命医科学の融合分野やライフスタイル改革に関わる学際分野において、 社会にイノベーションをもたらすことができる博士人材(高度な「知のプロフェッショナル」)の育成が行われています。 これらのプログラムでは、産業界や国内外の研究機関・拠点とも連携して、新たな知の創造と活用を主導し、次代を牽引する価値の創造や社会的課題の解決に挑戦するための実践的な教育が行われています。

 名古屋大学工学部・工学研究科では、今後も、現代社会で直面する諸問題に果敢に挑戦し、グローバルなリーダーとして活躍できる人材を輩出するとともに、 我が国が世界のトップでありつづけるための工学に資する高い研究成果を生み出し、社会に貢献し続けたいと考えています。