シーズNo.93

平成15年度名古屋大学工学研究科「産学官共同研究開発技術シーズ調査票」

 

 研究開発テーマ

   (シーズ)

酸化物系熱電発電変換材料の開発及び薄膜化

 

技術分野(該当分野に○印を付け別表の該当番号を記入。複数の場合は主なものに◎

研究段階(該当に○

〔 〕材料(No  )、 〔 〕バイオテクノロジー(No  )、 〔 〕情報通信(No  )

〔 〕機械(No  )、 〔 〕 医療・福祉(No  )、 〔◎〕 エネルギー(No.29)

〔 〕環境(No  )、 〔 〕 その他(No  )

 基礎          応用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーワード(5つ以内)

酸化物、熱電変換、発電、ペルチェ素子、モジュール

 

提案者職名・氏名

所属機関名(学部・研究室名)

助教授 吉田 隆

工学研究科・エネルギー理工学専攻・超伝導工学講座

 電 話

052-789-5417

 mail

yoshida@nuee.nagoya-u.ac.jp

 FAX

052-789-5418

 ホームページ

http://www.ees.nagoya-u.ac.jp/~web_dai1/index.html

 

 研究開発の目的

(研究の目的、最終的な事業化分野)

熱電変換を用いた研究開発は、アメリカや旧ソ連などの宇宙開発や軍事用などの限られた特殊な電源として実用化されてきた。しかし、日本では、そのような用途がないことや、非効率な理由から、研究開発が振興しなかった。

しかし、最近環境問題やエネルギーの有効利用などの観点から、熱電変換によるエネルギーの再利用が検討されるようになった。例えば、従来の熱電材料(BiTeなど)を用いた焼却炉等からの廃熱、太陽熱、自動車からの廃熱などがそれである。数百℃以下の比較的低い温度域での実用化が行われてきている。そんな中、NaCo2O4などの酸化物系熱電材料が発見され、材料の腐食などの観点から、500℃以上の高温域での実用が考えられてきている。

我々は、酸化物系材料(超伝導体、誘電体、磁性体など)の薄膜を長年の間研究してきており、学会及び論文に報告してきている。酸化物系熱電材料がペロブスカイト構造に類似した構造を有しており、超伝導体や誘電体同様に、基板にエピタキシャル成長すると考えた。

我々は、酸化物系材料の薄膜メカニズムの解明の一環として酸化物系熱電変換材料の薄膜化、さらに薄膜の物性評価を行う。さらにそれらの知見を元に、高特性化、P型熱電材料とn型熱電材料の積層、最適基板の選定などの課題を解明していく。

研究開発の内容(概要)

(研究の内容・課題等を具体的に、必要に応じ資料を添付してください)

最近、エネルギー、環境問題の一環として、熱電変換が重要視されるようになっている。エネルギー資源は、全体の60%以上が廃熱として、捨てられている。廃熱としての回収、さらに熱電材料に電気を流すことによる冷却などの課題から、熱電材料の研究が行われている。ここ数年間に、熱電材料として酸化物系材料が発見され、その性能指数が従来の特性を大幅に向上するものであった。我々は、酸化物系熱電材料の薄膜化、さらに積層膜などの検討を行う。さらに、各種特性の結晶構造に伴う異方性などを評価するとともに、P型熱電素子とn型熱電素子の積層構造なども作製し、それらの評価も行い、高特性化を目的とする。

 新規性、独創性

(当該シーズの新規性・独創性・優位性等を具体的に)

酸化物系熱電変換材料は、粉末混合法で作製したバルク材などの研究を中心に、新規熱電材料の開発が進行している。バルク材では、結晶が幾つかランダムな方向に並んだ状態で存在しており、多結晶である。そのため、電気特性や熱起電力などの特性は、一般的に低く、多結晶の評価が行われている。一方、Siなどの半導体や超伝導体で実績のある単結晶作製法などで作製させる、熱電変換材料の単結晶法なども検討されている。しかし、単結晶法は、実用化を念頭にいれると試料の大きさに限界がある。

我々は、SiGaAsなどの半導体で実用化されている化学気相蒸着法(CVD)を念頭にいれ、薄膜プロセスを用いてその物性評価、実用化への指針を出すことが目的である。作製された薄膜は、結晶方向が揃っているため、その軸方向の物性評価、さらに粒子間に存在する粒界評価なども評価することができる。さらに、最適条件で得られる高特性な熱電変換薄膜は、厚膜化、積層化により物性評価のみならず、実用化への指針をえることができる。

上記のように、実用化を念頭にいれて、従来のバルク材に比べ高特性や異方性評価などが容易な薄膜、厚膜を用いた熱電変換材料の研究を遂行する。

地域経済への波及効果

(本研究によって期待される成果・効果、地域への貢献、産業界へのインパクト等)

現在、世界のエネルギーの90%以上は、石油や石炭などの燃焼エネルギーに頼っている。これらは、いつか世界中から無くなるという心配だけでなく、燃焼時に発生するCO2ガスやSOxガスが発生するため、地球温暖化や酸性雨などの問題を発生している。これらは、社会的な問題となり、現在その対策が急務と考えられている。一方、燃焼エネルギーに代わる原子力エネルギーは、未だ安全性や放射線廃棄物などの問題を抱えている。

我々が検討する熱電変換材料は、燃焼エネルギーの有効利用など、限られたエネルギーの有効利用に大きく貢献する。

 実用化への見通し

(共同研究の相手となる企業・業界、実用化までの期間等)

現在、熱電変換材料として、数100℃以下の温度域において、一般の小型焼却炉やゴミ焼却炉、太陽熱、自動車からの廃熱、熱電時計などが実用化、または実用化への開発が進行している。

一方、熱電冷却は、環境汚染の問題がない小型の熱電冷蔵庫などで一般に普及している。

我々が研究する酸化物系熱電変換膜は、材料自体の腐食などの問題がないため、数百℃以上の高温での使用が可能となる。

従来の熱電変換材料からの移行よりも、より変換効率が高い高温域での使用も可能となる。

実用化に至ったら、基本的には従来の構造を継承でき、性能は向上すると考えられる。

 関  連

工業所有権

  発明(考案)等の名称

    発明者

   出願人

  外国出願

特許準備中

 

 

  〔 〕有

  〔 〕無

 注意事項: @ 記入事項が多い場合は、縦方向に枠の大きさを広げて下さい。

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         ので非公開情報の箇所は「非公開」と御記入下さい。