シーズNo. 94 

平成16年度「産学官共同研究開発技術シーズ調査票」

 

 研究開発テーマ

   (シーズ)

無線制御のための超高信頼性無線通信システム(Wireless Wire)

 

技術分野(該当分野に○印を付け別表の該当番号を記入。複数の場合は主なものに◎

研究段階(該当に○

〔 〕材料(No  )、 〔 〕バイオテクノロジー(No  )、 〔○〕情報通信(No19)

〔 〕機械(No  )、 〔 〕 医療・福祉(No  )、 〔 〕 エネルギー(No  )

〔 〕環境(No  )、 〔 〕 その他(No  )

 基礎          応用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーワード(5つ以内)

超高信頼性、無線通信、制御、生産システム

 

提案者職名・氏名

所属機関名(学部・研究室名)

教授・片山正昭

名古屋大学 エコトピア科学研究機構 情報・通信科学研究部門

 電 話

052-789-4430

 mail

katayama@nuee.nagoya-u.ac.jp

 FAX

052-789-3173

 ホームページ

http://www.katayama.nuee.nagoya-u.ac.jp

 

 研究開発の目的

(研究の目的、最終的な事業化分野)

生産機器制御等のように,速度より信頼性が重要な用途を想定し,有線に匹敵する高信頼性を有する無線通信を実現する。従来は有線で行われていた産業機器の無線制御の可能性を拓く。そのためまず工場内の電波環境を通信の立場から実測・モデル化し,次に信頼性の観点での設計評価手法を検討する。さらに実際に試作実験を行い,工場内のような劣悪な無線環境で,従来のシステムでは実現できない高い信頼性を持つ無線通信の実現を実証する。

研究開発の内容(概要)

(研究の内容・課題等を具体的に、必要に応じ資料を添付してください)

高度な生産システム(インテリジェント・マニュファクチャリング・システム)の神経とも言うべき情報通信部分に無線システムを適用することができると,生産システムが環境変化へ適応する能力が大幅に向上することが期待できる。しかし従来の無線システム,例えば無線LANシステム等は,平均的特性の向上を狙った設計が行われており,最低品質保証という観点が不足している。これに対し,実際の工場内の電波環境を明らかにした上で,高い信頼性を要する産業機器の制御に適用可能な高信頼性無線システムの構築手法を明らかにし,実際のデモンストレーションシステムで検証を行う。

 新規性、独創性

(当該シーズの新規性・独創性・優位性等を具体的に)

従来の無線システムの多くは,信頼性よりも速度の向上やサービスエリアの拡大を重視したbest effort型のものとして発展してきている。性能を保証するguaranteed型システムという観点からの検討がほとんど行われていない.また工場内等の電波環境そのものも,断片的な報告はあるが,体系だった測定が行われていない。当然,システム設計のために必要な工場内電波環境の一般的モデルすら存在しない。

これに対し,本研究は,工場内の電波環境について通信システムの立場から測定実験・解析・モデル化を行い,信頼性の立場で設計を行い,そして実証試験を行うものである。

 

@工場内の電波環境の明確化

複数の工場において雑音の面と電波伝播の面から電波環境の実測を行う.この結果は,データベース化するとともに,それに基づいて汎用的な理論モデルを構築する。工場内の電波環境が劣悪であろうことは,従来,断片的に報告されているのみである。それに対し体系的な測定を行い,またモデル化を図ろうという点が,新しい点である。

 また従来このような環境での測定は,EMC的観点から信号や雑音の平均電力の観点から測定されている。また受信信号強度の物理空間依存性の測定では,単一周波数信号を用い,それぞれの位置について順次測定が行われている。これに対し本研究では,広帯域にわたる信号や雑音を高速リアルタイムで測定し,時間変動や周波数・物理空間に対する依存性を明らかにする点が学術的にも工業的にも新規性が大きい。

 

A信頼性の観点での設計評価手法

上で明らかにした電波環境において,最低特性を保証するguaranteed型システムの構築のための検討を行う。ここでは,空間ダイバシチ技術と誤り訂正技術を融合した多次元符号化技術を始めとする,研究代表者等が研究・開発を行ってきた手法をフルに活用し,特性改善について定性的・定量的に検討し,システム設計の準備を行う。従来の無線システムが最高性能や平均特性の向上を評価基準にしていたのに対し,最悪の条件での特性の向上(保証)という観点からシステムを設計・解析する点が,新規性である。

 

B「超高信頼性無線制御デモンストレーションシステム」の試作

従来の無線LAN等を用いたシステムと,本研究の成果を適用したシステムの両者で比較実験を行う。従来の無線LAN等を,制御のようなデータ量は小さくても誤りの被害が大きなシステムに適用した場合の性能や問題点を明らかにするだけでも,類似の報告がみられない独創的な視点である。さらに最高性能・平均特性ではなく品質保証という概念を通信に取り入れることで無線による産業機器の制御の可能性を実際に示す点は類例を見ず,その実証試験までを行う点は新規性が大きい。

 

地域経済への波及効果

(本研究によって期待される成果・効果、地域への貢献、産業界へのインパクト等)

 

生産システムの高度化は,個々の産業機器の高度化だけでは達成できない。これらの機器が通信ネットワークによって,相互に有機的に結合され,一体のものとなる必要がある。このような高度な生産システム(インテリジェント・マニュファクチャリング・システム)の神経とも言うべき情報通信部分に無線が使用可能となることで,生産システムが環境変化へ適応する能力が大幅に向上することが期待できる。

また,産業機器の無線制御という新しい市場分野の創出も直接的な波及効果として無視できない。これは,例えば電話における携帯電話,従来の有線LANに対する無線LAN市場の出現等とよく似たものと考えられる。産業機器の配置等への柔軟性に対する要求が高くなるにつけ,産業機器の無線制御の需要は大きくなってゆく。

また,データを一定時間内で確実に無線伝送することを可能とし,頼れる通信あるいは,Wireless Wireとも呼ぶべき無線方式を実現する本研究の成果は,産業機器の制御のみならず,

・検査ロボット等の自走装置の無線コントロール

・家庭内機器制御(HA)における高信頼性無線制御の実現

・自動車内配線ハーネスの無線化

  ・高度交通システムにおける車路間,車々間通信の高信頼化

 ・飛行機内の制御信号伝送とその耐妨害性能の向上

等の幅広い波及効果を持つものである。

なお,参加企業にとっては,本研究開発の技術成果を利用できるという直接的効果の他に,高い信頼性を持つ通信が困難な状況の電波伝播測定,通信システムの設計・試作を通して,最先端の無線通信技術を習得できるというメリットもある。

 実用化への見通し

(共同研究の相手となる企業・業界、実用化までの期間等)

共同研究の相手方としては,

・機器の無線制御に関心を持つ企業

・産業機器・生産装置分野の企業

・ホームオートメーション,ITS等通信の信頼性が必要な企業

 を想定している。

 本研究テーマは,名古屋産業科学研究所のプロジェクトテーマとし

 て名古屋工業大学菊間研究室および複数の企業研究者により研究開発を行っているところであり,現在参加企業の追加募集中である。

上記のプロジェクトメンバー者は,屋内外の電波環境の測定実験やモデルについて多くの経験を持っている。機器の調整・性能評価に必要な電波暗室,電波環境測定装置などの準備も整っている。また,電力線上の雑音など,人工雑音の測定やそのモデル化においての経験は,そのまま工場内の電波雑音の評価・解析に適用できる。また既に高時間分解能・長時間観測が可能な無線環境測定装置の製作が終わっている。

最低特性の向上(保証)という観点からは,信号を時間・周波数という従来の次元とは別の次元で捉える空間ダイバシチ技術が必要であるが,これについても提案者等は適応アンテナ制御,時間周波数物理空間多次元符号化/多次元等価技術といった方式を提案・研究してきている。

通信システムの信頼性向上は、単に電波領域や変復調・符号化だけでは十分でない。さらに上位の伝送制御技術も不可欠である。プロジェクトのメンバーはこの分野において多くの研究業績を挙げてきている。

無線通信システムの信頼性を考える場合,従来の性能評価尺度とは異なる新しい尺度が必要である。本研究開発テーマの提案者はこのような信頼性尺度についても研究を行ってきており、招待講演等でその成果を公表している。

 

 関  連

工業所有権

  発明(考案)等の名称

    発明者

   出願人

  外国出願

誤り制御符号化および誤り制御復号装置

山里敬也、片山正昭、小川明、鄭辰

山里敬也、片山正昭、小川明、鄭辰

  〔 〕有

  〔○〕無