シーズNo. 66 

平成16年度「産学官共同研究開発技術シーズ調査票」

 

 研究開発テーマ

   (シーズ)

糖鎖モジュール化法を活用した感染性微生物並びに毒素吸着素材の開発

 

技術分野(該当分野に○印を付け別表の該当番号を記入。複数の場合は主なものに◎

研究段階(該当に○

〔○〕材料(No  )、 〔◎〕バイオテクノロジー(No7,8,10)、〔 〕情報通信(No  )

〔 〕機械(No  )、 〔○〕 医療・福祉(No  )、 〔 〕 エネルギー(No  )

〔○〕環境(No  )、 〔 〕 その他(No  )

 基礎     応用 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーワード(5つ以内)

SARS、ウイルス、O-157、糖鎖、バイオポリマー

 

提案者職名・氏名

所属機関名(学部・研究室名)

 助教授・西田芳弘

名古屋大学大学院工学研究科 物質制御工学専攻

生体材料設計研究グループ工学

 電 話

052-789-2553

 mail

nishida@mol.nagoya-u.ac.jp

 FAX

052-789-2528

 ホームページ

http://www-mol.apchem.nagoya-u.ac.jp/

 

 研究開発の目的

(研究の目的、最終的な事業化分野)

インフルエンザ、SARS、エイズ等の感染性ウイルス、O-157など病原性微生物が生産するタンパク質毒素(ベロ毒素、コレラ毒素、炭素菌毒素)、BSEプリオン蛋白質による感染症が大きな社会問題となっている。これらウイルスやタンパク質毒素は、ホスト細胞の表面を被う特定の糖鎖を認識して結合を行うことで、ヒトに感染することが知られている。このことは、糖鎖が毒素の感染予防薬や毒素の捕捉材料として機能することを意味している。その一方で、複雑な構造を持つヒト細胞表層糖鎖を大量に工業生産することは困難であること、又、代謝酵素による分解を受け易いなどの問題があり、糖鎖をベースとする吸着材料や感染治療薬の開発は殆ど達成されていない。

本研究開発は、感染症問題を克服するための糖鎖材料を、新たに開発した「糖鎖モジュール化法」と「簡便グリコシル化法」を用いて行うことを目的とする。本研究の成果は、(1)バイオ(2)材料(3)医薬品(4)化学(5)食品(6)フィルターを使用する各種電気、自動車分野などでの事業化が期待される。

研究開発の内容(概要)

(研究の内容・課題等を具体的に、必要に応じ資料を添付してください)

先に提案者等は、ヒト糖鎖の生理活性構造を簡便に構築するための新技術「糖鎖モジュール化法」(Angew. Chem. Int. Ed.,2002年, グライコワード登録2004年5月)、並びに、「簡便グリコシル化法」(Org. Lett., 2003年)を開発している。これら新手法は、感染性ウイルスやタンパク質毒素を吸着する糖鎖素材の開発に革新的手法を与える。本法を用いて、新規糖鎖素材に関する次の発見をしている。

(1) O-157志賀毒素の吸着、中和能力を持つ糖鎖素材「ガラクト型トレハロースとそのバイオ高分子」の発明:トレハロースの水酸基1つが反転したガラクト型トレハロース(GT)から成るバイオ高分子が、病原性大腸菌生産毒素(志賀毒素)と結合して細胞感染を防ぐ機能を持つことを発見した(Org. Lett., 2002年、特許出願済)。GTは、代謝酵素による分解を受けにくいこと、単純な化学構造を持ち大量生産法の確立が期待されることから、新規生物機能素材として、その産業的利用が可能である。

(2)抗ウイルス素材「6-硫酸化グリコサミン高分子」の発明:6-硫酸化グリコサミン並びにガラクトサミンを含有する高分子は、インフルエンザ,エイズなどのウイルスが特異的に結合するシアル酸結合型タンパク質の構造を模倣したウイルスカット素材として機能する(特許出願済)。実際に、インフルエンザウイルスのシアリダーゼをマイクログラムレベルでブロックすることを確認している。現在、ウイル吸着材料、並びに抗インフルエンザ医薬としての実用化研究を行っている。

 新規性、独創性

(当該シーズの新規性・独創性・優位性等を具体的に)

 ヒト細胞や天然に存在する糖質資源を、産業ベースで活用する試みは、古くは、甘蔗(ショ糖)、セルロース(製紙)、でんぷん、キチンなどがあり、多くの産業を創出してきた。最近では、より付加価値の高い糖質資源として、プルラン、キシログリカン(キシリトールの原料)、フコイダン(海藻)、αグルカン類(菌糸類)などが注目されている。その一方で、ヒト細胞表面に存在する生理活性糖鎖は、ウイルスや微生物毒素を吸着する機能を持つことから、抗生物質に代わる次世代型医薬として注目され、国際的な競争分野となっている。しかし、細胞表層糖鎖は、複雑な構造を持ち、大量生産が困難であること、酸や酵素に対して不安定であるなどの問題点があり、「糖鎖医薬」や「糖鎖材料」の実用化は、ほとんど実現していない。

 提案者等が、開発を行った「糖鎖モジュール化法」と「簡便グリコシル化法」は、ヒト糖鎖の生理活性構造を、一気に構築する革新的新技術である。本法は、ドイツ応用化学会誌Angew. Chem. Int. Ed.とアメリカ化学会速報誌(Org. Lett)にとして報告を行った。また、同手法はアメリカ化学会が編集するトピック研究Web誌(Heart-Cut, 2003, 1月号)に取り上げられた。

 本研究で実用化を行うガラクト型トレハロース(GT)と6-硫酸化グリコサミン類、並びに、それらから成るバイオ高分子は、天然糖鎖資源と生理活性糖鎖の両方の特徴を合わせ持つ新らしいタイプの機能性糖質に位置付けられる。ベロ毒素、インフルエンザウイルス、BSE、リュウマチに対する機能性の発見は、上述の「糖鎖モジュール化法」と「簡便グリコシル化法」の開発のよるものであり高い独創性に基づく。

地域経済への波及効果

(本研究によって期待される成果・効果、地域への貢献、産業界へのインパクト等)

従来型の抗生物質治療が、MRSAなどの耐性菌の出現により、方向転換を余儀無くされている現状において、生体内成分を活用して微生物やタンパク質毒素を捕らえることの可能な「糖鎖医薬」や「糖鎖材料」の開発には、感染問題を解決する社会の夢が託されているといっても過言ではない。本申請研究で実用化を行うガラクト型トレハロース(GT)、6-硫酸化グリコサミン類、GGPLsなどの機能性糖鎖とそれらから成るバイオ高分子は、「糖鎖医薬」と「糖鎖材料」開発の素材として理想的な特徴を示している。

機能性糖鎖の開発は、抗生物質に依存しない薬剤治療法の確立や環境材料の開発を可能とし、ザナミビルやタミフルなの抗インフルエンザ薬を創出している。6-硫酸化グリコサミン類とそのバイオ高分子、コリン含有糖脂質などは、インフルエンザ、エイズ、BSE、マイコプラズマ等の感染性問題を克服する新規糖鎖素材として、幅広い活用が可能である。これらの新糖鎖素材は比較的単純な構造を持ち、大量生産法の開発も検討を行う。ここで取り上げる糖鎖はこれまで注目されていなかった糖鎖であるが、このことは、現在大きな産業に発展したトレハロース、キシリトール、タミフルが過去に辿った歴史に似ている。我が国で生まれた新規糖鎖素材として、多くの産業分野での活用が期待され、新しい産業や医療の創出につながる。

 実用化への見通し

(共同研究の相手となる企業・業界、実用化までの期間等)

(1)GT並びにそのバイオ高分子の開発

 大量生産:林原生物化学研究所の茶圓博士らは、デンプンからトレハロースを大量生産する手法を世界に先駆けて開発し、年間に数千トンオーダーで市場供給する産業に導いている。同時に、ガラクト型トレハロースのバイオ生産に関する予備的な試験を行い、いくつかの微生物酵素が本糖鎖を合成する活性を持つことを発見しており、酵素エンジニアリング法の導入によりGTの大量生産は可能と考える。

生物評価と実用化:共同研究者の岐阜薬科大学微生物教室の森裕志教授は、べろ毒素の2種のタイプ(Stx1型とStx2型)を選択的に生産する大腸菌培養法を確立するとともに、ベロ毒素中和活性試験法を開発している。

(2)6-硫酸化グリコサミンとそのバイオ高分子の開発

大量生産:キチン、キトサンから安価に供給されているグリコサミンから、6-硫酸化グリコサミンとそのバイオ高分子を生産する。共同研究者の産業技術総合研究所先端バイオ部の鵜沢浩隆博士は、酵素法による各種6-硫酸化グリコサミン類生産法を既に確立している。大量生産は、キチン、キトサン供給企業との提携を計画している。

生物評価と実用化:静岡県立大学薬学部の鈴木康夫教授と鈴木隆助教授のグループは、抗ウイルス活性試験法を確立している。又、抗ウイルス薬の生物試験と実用化は、富山化学工業との共同研究を進めている。6-硫酸化グリコサミンを主成分とする抗ウイルス剤、吸着フィルターの開発を、関連する民間企業と提携して進める計画である。

 

  発明(考案)等の名称

    発明者

   出願人

  外国出願

 

ガラクト型トレハロース若しくはその誘導体の製造方法及びそれによって得られるトレハロース由来のべろ毒素用リガンド 

特願2001-265737 

 

生理活性物質含有化合物及び生理活性物質含有高分子化合物

特願2000-272163

 

「硫酸化ガラクト—ス高分子化合物」特許公開平11−315101

 

 

「硫酸化グルコース化合物」

(平成13年9月出願)

 

 

「プリオン増殖抑制剤」

平成16年2月出願:

 

 

 

 

 

西田芳弘

土肥博史

小林一清

 

 

 

西田芳弘

田中秀彦

小林一清

 

鵜沢浩隆

西田芳弘

小林一清 他4名

 

小林一清

西田芳弘

他5

 

西田芳弘

小林一清

他3名   

 

名古屋産業科学

研究所 (中部TLO)

 

 

 

 

名古屋産業科学研究所(中部TLO)

 

 

産業科学総合科学

研究所 (AIST)

 

 

科学技術振興財団

(CREST)

 

 

名古屋産業科学研究所(中部TLO)

 

  

  [ ]有

 [○]無

 

 

 

 

[ ]有

[○]無

 

 

[ ]有

[○]無

 

 

[ ]有

[○]無

 

 

 [ ]有

 [○]無